「声帯トレーニング」と言われてピンとくる人は多くありません。
しかし正しく声帯を鍛えることができれば、力強い声が出せたり、声量がグッと上がる、通る声が手に入るなど、その効果はとても大きいものです。
一方で間違ったトレーニングを続けてしまうと、声帯が鍛えられないばかりか、あなたの声に悪影響を与えてしまいます。また、「そもそも声帯って何なんだろう?」と実はよく分からない部分もあるかと思います。
そこで今回は、そもそも声帯を鍛えるとはどういうことか、そして声帯トレーニングの注意点と具体的なトレーニングのやり方を紹介します。
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声帯とは
まずはじめに声帯と声の関係について少しお話しします。
あなたは、声が出る仕組みを知っていますか?「声帯が振動すること」と答えられる人は多いのですが、これでは少し不十分です。
声とは声帯が閉じた時に息が当たることで、声帯が振動した音のことです。そして、声帯が閉じた時に互いの声帯が当たる部分を声帯靭帯[せいたいじんたい]といいます。
「じゃあ声帯を鍛えるってことは、声帯靭帯を鍛えるってことか!」というと、実はそうではありません。なぜならここは筋肉ではなく靭帯なので鍛えることはできないからです。
鍛えるのは声帯閉鎖筋
では、何を鍛えればいいのか。それが声帯閉鎖筋[せいたいへいさきん]です。声帯閉鎖筋とは声帯が開閉する時に使われる筋肉の総称のことです。
つまり、声帯を鍛えるとは正しくは声帯閉鎖筋を鍛えるということです。この筋肉を上手く使えるようになることで、しっかりツブのそろった声が手に入ります。
声帯閉鎖筋を鍛える3つのメリット
次に声帯閉鎖筋を鍛えることで得られるメリットを説明します。
メリット1:声量が上がる
声帯閉鎖を意識することは「攻める歌い方」と呼んだりしますが、声が鋭くなるため淡い声にならず、声量が格段にアップします。
メリット2:地声の高音域が広がる
声帯閉鎖がしっかりできるようになると高音の発声でも声帯が離れず、声が裏返りにくくなります。結果として高音域が広がります。
メリット3:力強い声が手に入る
声量や声域が変化すると同時に、太くて力強い声が手に入ります。ですので、ロックなどバンドで歌う時にも声が楽器に埋もれにくくなります。
声帯閉鎖筋を鍛える時の2つの注意点
続いて、声帯閉鎖筋を鍛える時の注意点も見ていきましょう。実際にトレーニングをする際には、この注意点をしっかり意識した上で行うようにしてください。
注意点1:喉を締める感覚と似ている
これは一番気をつけなければならないところです。声帯閉鎖筋を使う感覚は、喉を締める感覚と似ています。喉声は声を傷つけてしまいますし、響く声はまず手に入りません。
この感覚は慣れれば区別はすぐにつきますが、それまでは気をつけないといけません。喉の下の方に力が入ったり、喉がイガイガし出したら喉を締めている可能性が高いのでストップしてください。
注意点2:無痛神経に気をつける
声帯の周りの筋肉には無痛神経というものが通っています。簡単に言えば疲れたことや限界に気付きにくいということです。
例えば腕立て伏せなら途中で腕が痛くなるので、「今日はここまでにしておこう」とトレーニングをストップできますよね?しかし、声帯の周りの筋肉にはそういった痛みを感じる感覚がないため、自分の筋肉の限界を知ることが難しいのです。
疲れてきたことに気付かないため、いつの間にか喉声になってることも多いもの。少しでも変だなと感じたら素直に休むようにしましょう。
声帯閉鎖筋の鍛え方
それでは、お伝えした注意点に気をつけながら、実際に声帯閉鎖筋を鍛えていきましょう!
STEP1:声帯閉鎖筋を使う感覚を覚える
まずは人差し指と中指を重ねて軽く噛んでください。これは顎に力が入らないギリギリの口の大きさだと言われてます。
鏡を見ながら唇を動かさないように注意して「ハッ」「ホッ」と少し強めに発声してみましょう。多分「ホッ」の方が難しいと思います。
その時に、どこで音を変えているのかよく意識してみてください。きっと喉仏の奥辺りが「クン」って動くはずです。それが声帯閉鎖筋を使ってる感覚です。しっかり掴みましょう。
STEP2:発声練習を繰り返す
ここでは難易度が優しいものを教えます。まず「ガッガッガッ」と軽く発声してください。
わずかでも、STEP1の時のような声帯閉鎖筋を使ってる感覚があると思います。
次に「ハッハッハッ」と発声してみましょう。最初は「ガッ」よりも発音しにくいのではないでしょうか?これを「ガッ」と同じように発声できるまで練習してみてください。これだけで声帯閉鎖筋の感覚を掴みながら、筋肉を鍛えることができます。
慣れてきたら、その感覚を意識しつつ歌を歌ってみましょう!
歌詞の一文字ずつに意識が必要ですので、最初は言葉が詰まっていない曲がオススメです。例えば、絢香の「三日月」や、THE BOOMの「島唄」などがそうですね。
この練習を繰り返すうちに、いつもより楽に歌えている上に、強い発声ができるようになります。そうなれば声帯閉鎖筋が鍛えられた証拠です。
まとめ
「音のツブを揃える」と私は言っていますが、声帯トレーニングをすることで、声が通る人の特徴の一つでもある「優しく出しても響く声」が手に入ります。
高音が楽に出せたり、声量が一気に上がるなどメリットも多いのですが、その反面喉を痛めたり、間違った覚え方をしてしまうリスクもあります。
もし、独学だとトレーニングの感覚が掴めないと感じたら、無理せずプロのボイストレーナーに習ってみることも考えましょう。