「歌を学んでみたい、習ってみたい」と思って教則本やスクールを調べてみると、「ボイストレーニング」と名のつくものと「声楽」と名のつくものとに、分かれています。
そしてボイストレーニングと声楽とでは、歌唱法や指導の仕方がものによって全然違うので自分にとってどっちが正しいのか、どっちを学べばいいのかがよく分かりません。
そこで今回は、ボイストレーニングと声楽との大きな違いについて説明します。もし、あなたが歌の練習法について悩んでいたり、歌のスクール選びに悩んでいるなら、ぜひ参考にしてみてください。
[box class=”box27″ title=”ちなみに”]私はボイストレーナーですので声楽の知識は深くないこと、声楽目線での説明ではないことを理解していただいた上で読んでもらえると幸いです。[/box]
ボイストレーニングと声楽の2つの大きな違い
まずは、ボイストレーニングと声楽の違いについて見ていきましょう。
1:使われる音楽ジャンルが違う
一般的にボイストレーニングはポップスやブルース、ジャズ、ロックといったジャンルで使われる歌唱法であるのに対し、声楽はクラシックのジャンルで使われる歌唱法です。
じゃあ「上達したい音楽ジャンルによって歌唱法を選べばいいのか」というと、実はそうとも言い切れません。これは後述しますが、必ずしも音楽ジャンルによって、歌唱法が完全に決まるわけではないんです。
2:教え方が違う
教え方の違いでよくあるのが高音の出し方についてです。ボイストレーニングと声楽とでは、高音の出し方一つでも教え方がまるで違います。
例えば、ボイストレーニングで高音を習ったら、一度は鼻腔[びくう]について学びます。なぜならボイストレーニング的には、この鼻腔の使い方が高音を伸ばす秘訣だからです。
しかし、声楽において鼻腔を使うことは絶対にNGであり、使っていいのは「頭声」と呼ばれる上咽頭[じょういんとう]の部分までです。
もし、あなたが高音を習得したいと思っていたら、どちらを教え方を信じればいいのか困ってしまいますよね?いったいどちらが正しいのでしょうか?
教え方の違いは美学の違い
実はどちらの教え方も正しいんです。この教え方の違いは、それぞれの美学の違いにあります。
よく私がボイストレーニングを受ける人に言うのですが、B’zが「千の風になって」を歌ったらなんか違うと思いませんか?逆に、秋川雅史が「ultra soul」を歌ってもしっくりこない感じがします。
もちろん、それはそれで聴いてみたいですが、やはり違和感がありますよね。
この「なんか違う」という感覚は、それぞれの美学の違いによって生まれます。どういうことかというと、声楽で扱うクラシックは声の美しさに重きを置いています。一方、ボイストレーニングで扱うポップスやブルース、ジャズ、ロックは聴く人に語りかけるように歌うのでメッセージ性に重きを置いているんです。
そんなふうに「歌を通して何を伝えるのか、どう伝えるのか」という美学の違いが音楽ジャンルと結びつき、結果として教え方の差になっています。ですので「教え方が違うじゃん」と思わず、あなたが学びたい方を選ぶことが大切なんです。
やりたいのはどっちか考えてみよう
ここまで、それぞれの美学を元に音楽ジャンルによる違い、教え方の違いをお伝えしました。じゃあ、クラシック以外のジャンルを選ぶならボイストレーニングなのかというと、一概には言えないのです。
実はポップスの世界でも、声楽の歌唱法で歌うアーティストは沢山います。例えば、日本ではKalafinaの楽曲などでも出てきますし、エンヤもそうです。これは、それぞれのアーティストの美学によるところでしょう。
Kalafina/oblivious
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ENYA/ONLY TIME
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もし、あなたがボイストレーニングを学ぶべきか声楽を学ぶべきか迷っているのなら、音楽ジャンルに縛られるのではなく好きなアーティストや歌いたい楽曲を元に、どちらを学べばいいのかを考えてみると分かりやすいはずです。
まとめ
お伝えしたように、ボイストレーニングと声楽には教え方に根本的な違いもあります。なので、どちらが正しいということではなく、必要に応じて決めていくと音楽はより楽しくなり、表現の幅も広がるのではないでしょうか。
あなたがこれから音楽を学んでいく上での参考になれば幸いです。